安倍首相と黒田氏の行動が交差するのは2003年

日本を代表する通貨マフィアの一人である黒田東彦アジア開発銀行(ADB)総裁が、第31代日銀総裁に就任する

若き大蔵官僚時代から、マクロ経済にダイナミックな変化を与えることができる金融政策に強い関心を持ち、念願とも言えるポストを射止めた金融政策のレジームチェンジを求めた安倍晋三首相の登場という幸運なめぐり合わせが、黒田総裁を誕生させたとも言える安倍首相と黒田氏とは、どこで接点があったのか──新総裁が決まるまでの過程を追っていくと、この先に予想される大胆な金融政策の転換ぶりが透けて見えてくる

<最終決断は2月15日前後>

「ADB総裁の後任は、引き続き日本から出せる公算が大きい」──ある有力ブレーンが安倍首相に伝えた2月初旬、黒田氏の日銀総裁就任に向けた動きが加速した他方、国際金融市場では円安の進展を材料に「通貨安戦争」への懸念が高まり、2月12日には日米欧7カ国(G7)が為替声明を公表15、16日にモスクワで開催されるG20では、日本に対する「円安誘導批判」が集中する懸念もあった

デフレ脱却のための大胆な金融緩和が、円安誘導と批判されないため、国際金融市場に説得力のあるメッセージを出せるのは「黒田氏以外にない」安倍首相が最終的に決めたのは「2月15日前後だった」と先の有力ブレーンは振り返るただ、この決断にいたるまでの道のりは、予定調和を思わせるような一直線の道ではなかった

<総選挙前に安倍─黒田会談>

安倍首相と黒田氏の行動が交差するのは2003年3月黒田氏が同年1月に財務官を退いて、3月から内閣官房参与に就任し、第1次小泉内閣官房副長官だった安倍首相と首相官邸で顔見知りになった当時、与党から財務副大臣政務官に就任していた複数の政治家の1人は「財務省の立場を無視して、黒田財務官がインフレターゲットの効用について語っていたので、厳しく注意した」と指摘する財務官僚として異彩を放っていた黒田氏が、この参与時代に安倍首相の目に留まったようだ

2012年12月4日の衆院選公示の直前、黒田氏は当時の安倍自民党総裁の招きに応じ、後にアベノミクスと呼ばれる独自の経済政策について意見具申した安倍首相ブレーンの中の1人が、安倍─黒田会談の存在を認めている冒頭に登場した首相ブレーンは、この段階から安倍首相の頭の中には、「黒田総裁」という名前が選択肢の1つとしてあっただろうと述べている

<首相周辺でダブル岩田の声、財務省は武藤氏>

だが、安倍首相を支える有力メンバーは、それぞれの候補者名を胸に秘め、なかなか収れんする動きを見せなかった一部の側近議員や首相ブレーンの一部は、元日銀副総裁の岩田一政・日本経済研究センター理事長を推していた日銀による積極的な金融緩和の手段として、大規模な外債購入を主張している岩田一政氏は「レジームチェンジ」した日銀をアピールするには最もふさわしいという判断が、そこには働いていた

首相ブレーンを形成する学者グループの中では、岩田規久男学習院大教授を強く推す声も根強かったリフレ派と呼ばれる学者グループは、安倍首相の経済政策を支えている中心的な存在であるとの自負があり、安倍首相自身の理解も得ているという自信があったとある学者は述べている

一方、財務省は次官経験者であり、日銀副総裁も務めた武藤敏郎氏を強く推薦していた安倍内閣を支えるナンバー2である麻生太郎副総理兼財務・金融担当相も、武藤氏の総裁就任を支持していた2月5日の会見で「組織運営の経験がない人が、日銀のような大きな組織を運営するのは、はなはだ問題」と述べ、学者が日銀トップに就任することをけん制していた

<影響した海外の円安誘導批判>

この情勢にまず、変化を与えたのは外的な要因だったG7為替声明が発表される状況になり、円安誘導批判が高まりかねない情勢になったことで「外債購入を真正面から主張している岩田一政氏の起用は、円安批判をしている国の誤解を増幅しかねない」(政府関係者)という見方が強くなり、有力候補から後退した

『ねじれ国会』のなかで不可欠な野党の同意を取り付けるという問題も大きな障害になったと複数の政府・与党関係者が指摘している武藤氏は5年前に民主党が反対し、総裁に就任にできなかった経緯があるさらに2月8日の段階で、公正取引委員長に杉本和行元財務次官を充てる国会同意人事案の提示を民主党が拒否し、「民主党との信頼関係は完全に崩壊した」(自民党筋)との見方が政府・与党内に広がったこの時点で「財務省出身の総裁は、民主党の賛成が前提だ5年前に民主党が反対した武藤さんはもう難しい」(政府関係者)との声も出ていた

<幻の武藤総裁─岩田一政副総裁案>

だが、こうした政府・与党内のムードとは別の動きもあったある与党関係者によると、麻生副総理周辺では2月上中旬に「武藤総裁、岩田一政副総裁」案があり、その局面では残っていたそれが最終的に消えた理由として、安倍首相の強い意思があったのではないかと、その与党関係者は述べている

安倍首相の心証に大きな影響を与えた政界関係者がいるみんなの党渡辺喜美代表だ第1次安倍内閣の閣僚だった渡辺氏、菅義偉官房長官塩崎恭久衆院議員と安倍首相の4人による定例会合「アビーロードAbbey Road)の会」は、メンバーが与野党に分かれた今も継続している今年1月19日、安倍首相の呼びかけで開かれた会合では、日銀総裁人事も話題に上った渡辺氏によると、その時点で安倍首相が武藤氏を推さないという感触を得たという関係筋によると、その後も渡辺氏はリフレ派の登用を強く求めていた

<安倍首相が意識したレジームチェンジ

リフレ派の主張で注目するべきは、金融政策の政策スタンスを根本的に改める「レジームチェンジ」を強く主張していることと、「期待に働きかける」ことが重要であると強調している点だリフレ派に属する学者の1人は、安倍首相はこの点を完全に理解していると指摘する金融政策のレジームチェンジを内外に示す上で、財務次官経験者の武藤氏は、最終的に安倍首相の選択から漏れることになった

残る黒田氏と岩田規久男氏のうち、通貨マフィアとして国際交渉の経験が豊富であり、ADB総裁として組織運営に長けている点を証明できる黒田氏が、麻生副総理の承諾も得られる候補として残ったのは、自然な結果と言える岩田氏が副総裁候補になったことで、首相支援のリフレ派を満足させ、「渡辺氏の顔を立てたバランス人事」(首相周辺筋)となった

このような流れを追っていくと、最終的に安倍首相が決断する場面にはだれが同席し、その会合はいつ、どこで開かれたのか、という疑問が残るロイターは政府・与党関係者、首相ブレーンや学者を含めた周辺の関係者などを対象に幅広い取材を展開したが、安倍首相が決断した場面を明らかにする証言を3月15日段階で得られていない

冒頭の首相ブレーンは、黒田総裁、岩田副総裁と日銀から中曽宏理事をもう1人の副総裁として起用する案が、2月20日前後には固まったと述べている

バーナンキ、キング、ドラギとは旧知の仲>

財務官出身者として初の日銀総裁となる黒田氏は、豊富な海外人脈が強力な武器になる黒田財務官の当時、副財務官を務め、ADBでも身近に接してきた河合正弘アジア開銀研究所長は「バーナンキ、キング、ドラギの各総裁とは旧知の仲日本人で彼ほどアジア各国の首脳や中銀総裁と対話している人間はいない」と指摘中銀総裁の中には「すでに黒田さんのところにアドバイスを求めてきた総裁たちもいる」と打ち明ける

金融政策に対する高い見識を海外の中銀関係者から認められている黒田氏だが、金融政策に対する強い関心は、大蔵省入省後、それほど時間を経ずに強まっていたようだある日銀OBは「黒田氏は、若い時分から金融政策に関心を持っていた」と述べるその背景として、マクロ経済に与える金融政策のインパクトの大きさがあったのではないかと指摘する「金融政策の持つある種のダイナミズムに魅力を感じていたように思う」と振り返る黒田氏が温めていた金融政策への"熱情"が、長い時間の経過と変遷を経て、変わらずにいたことが総裁ポストを手中にした大きな要因であったとも言えるだろう

<博覧強記の神話、自説曲げない強さ>

同時に黒田氏を彩る特徴として、「博覧強記」とも表現できる秀才ぶりがある教育大付属駒場高校(現筑波大付属駒場高校)の在学中に、同校図書館の所蔵する本を全て読破したという"神話"を作っている黒田財務官の前任財務官である榊原英資青山学院大教授は「経済学の本に限らず、数学や物理学、哲学などの本をよく読んでいた」と話す

財務省時代の部下の話からは、頭の回転が速く、懸案の解決策を素早く見通して「落としどころ」を素早く認識する能力に長けていた面が浮き上がる同時に対外交渉では「主張すべき点は、きちんと筋を通して説明していた」(榊原氏)という芯の強さもうかがえる

自説を曲げない強さは、財務官時代にも発揮された河合氏によると、当時の米国は日本の介入についてかなり批判してきたが「黒田氏は、決しておかしなことではなく、世界経済にとっても必要なことだと説明した今の状況と非常に似ている」と指摘する

鋭い批判の矛先は、日銀にも向けられてきた「15年もデフレに陥っているのは、日銀の責任」と断じている背景には、ADB総裁時代の経験も影響しているだろうと榊原氏は解説する欧米の金融専門家の多くは、日本のデフレは日銀の金融緩和不足という認識に傾いており、ADB総裁として欧米の専門家と数多く接し、自分の見解に間違いはないとの認識を深めていただろうと見ている

<求められる懸案処理の高い能力>

今回、黒田氏を日銀総裁に任命した安倍首相は、周辺を固めるリフレ派の主張に理解を示し、日銀にレジームチェンジを求めている理解力の高い黒田氏は、その点を十分に認識し、白川方明前総裁が率いてきた日銀とは、全く別の日銀を演出していくだろう「マーケットに働きかける」ことの重要性を認識している黒田総裁は、積極的な緩和が「財政ファイナンスではない」ということを強調し、国債の大幅な追加購入や、無期限緩和の前倒しなどを迅速に決める公算が大きい

その一方、国債の大量購入で長期金利を押し下げても、すでに0.6%台まで低下しているため、景気浮揚効果につながらないのではないかとの批判も、市場の一部にはある大胆な金融緩和が景気浮揚と物価上昇という結果に、どのような経路で結びつくのか、明快な説明を求められるまた、政府の意向を素早く忖度(そんたく)することが、かえって日銀の独立性を脅かす懸念を引き起こす可能性もある

念願の日銀総裁に就任した高揚感とともに、この先の金融政策をめぐる懸案処理の行方を、黒田氏は持ち前の高速処理脳で予測しているに違いないNYを拠点に独自の音楽活動を続けるロックバンド・THE RiCECOOKERS昨年は複数の新作をリリース、完成度の高さと引き出しの豊富さで、バンドの充実した創作状態を伝えてきた彼らが、半年ぶりとなるニュー・シングル「of the real」(UZCL-1020 税込1,200円)をリリース! 5月1日(水)発売です

 深淵に響く「of the real」と題されたタイトル・トラックは、バンドが新たな創作レベルに到達したことを告げる、広がりのある世界観を持ったロック・アンセムTHE RiCECOOKERSの代名詞とも言える幾重にも重ねられたギター・アンサンブルに、難易度の高いリズムワークを織り込んだ新たなオルタナティヴ・ロックを提示しています

 カップリングの2曲「Sweet Canaan」「ロックンロールを永遠に」もすべて新録現在のアメリカが放つ空気を存分に吸い込み、日本でのライヴ活動で体得した美しいメロディでの訴求力をふんだんに散りばめた、彼らならでは強力作品に仕上がっています

 また5月の大型連休シーズンには、同作を携え東京、大阪、名古屋、福岡を廻るツアー〈THE RiCECOOKERS 2013 春 TOUR“JUXTA-NOISE”〉の開催も決定! NYから日本のシーンに存在感を示すTHE RiCECOOKERSの魅力を体感できるツアーとなりそうです安倍首相と黒田氏とは、どこで接点があったのか──グッチ 財布 アウトレット安倍首相と黒田氏とは、どこで接点があったのか──ルイヴィトン ハンドバッグ モノグラム安倍首相と黒田氏とは、どこで接点があったのか──ルイヴィトン 二つ折り財布 新作